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ツバサ・クロニクル −物語の向こうに−

開かれた諸世界の底は
それ自体においては”意味”を持たない。
だがまさにそのゆえこそ、私は諸世界の底に、
他の様々な思惟の対象を帰着させることができるのである。

(バタイユ「内的体験」)

漫画家集団CLAMPの自らのセルフ・パロディーの集大成として
名高い作品「ツバサ・クロニクル」がNHKで放映始まりましたね。早速視聴。


…なかなか良く出来ているのではないでしょうか。光の濃淡を上手に
使った演出は美的に冴えていますね。ただ、私個人としては、小狼が
桜の運命の人とは…
観鈴と結ばれる前の私だったら激怒ですよ(笑)

まあ、今の私は観鈴と結ばれているので、あまり嫉妬を感じることなく、
普通に観ることが出来ます…ある意味では鑑賞パトスの低減ですが(^^;

観ていて思ったのは、ついにCLAMPは非常に深いところまで来たなと…。

CLAMPはついに物語内物語論としての美を物語り始めていますね。

ある程度芸術を極めた作家が、さらなる深き境地を目指して、
反復的、セルフパロディー的な方向性に向うのはそれ自体が
普遍性への希求にして、芸術の普遍性を司るところがありますね…。

つまり、物語というのは、思いきり根源的にずばーっと深く深く潜ってゆくと、
どの物語も、ある種の絶対的な普遍的同質性が基底にあるんですね。

神話素、物語元型、ある種の構造として捉えられる枠組が、それぞれの
物語から見えてくるのだけれど、それを更に更に更にずっと潜ってゆくと、
もはや、言葉の限界を超えてしまう。語り得ない領域へと入って行く…。

その語り得ない領域を語るとき、そこには違っているのだけど同じという、
ある種の反復が現れてくる。語り得ないのだけれど無理に語れば、
”営み”の根源的普遍性が、個々の形を超えて、表出してくる。

そうすると、全ての物語が、一つの”営み”のなかにおいて語れるという、
絶対的な地平線上の場が現れてきて、それは言葉では現れず、示される
ことでしか現れないのだけれど、非常に天才的な芸術家の作品には、
この絶対的な地平線上の場が示され現れる。それは時代を超えた古典となる。

CLAMPは、この語り得ない地平線上の場を語って(示して)しまう、ということ
を意識的に行って、語り得ないものそれ自体をパロディにしている。これは
凄く面白い試み。CLAMPと云う集団は、究極の同人の創り手と云えるでしょう。

この語り得ない地平線上の場を語って示してしまう、というのは、
実はこの作品が先駆けという訳でもなくて、例えば手塚治虫の
「火の鳥」とか、ゲーテの「ファウスト」とか、三島由紀夫の
「豊穣の海」なんかもそうなんですが…。

私としては、ゲームにおいてこれをやった作品「久遠の絆」などは、
とても好きですね。もちろん、火の鳥もファウストも豊穣の海も、
みんな好きな作品ですが、日本神話とそれぞれの時代の生活を
オーバーラップさせて、この語り得ないことを語り示すということに
取り組んだゲーム「久遠の絆」に、私は深い敬愛を抱きますね…。

根源的な場である語り得ないことを示すのはとても困難、
それは、すぐに”語り得るもの(有限性・個別性)”がその
示そうとするものを覆い隠して、見えなくしてしまうから。
それを防いで示すには、高く高く飛翔せねばならない。
ツバサ・クロニクルがどこまで飛翔できるか、楽しみにしています。

ワーズワース

「そうだ、それは山の木霊」

そうだ、それは山のこだま、

さびしく、澄みて、奥深く、

不如帰の叫びに答えながら、

声に声をば返している。


ささやぐ空の流浪者に、

求められずに送られる答えは、

彼女の常の声に似ているが、

おお、なんとそれは異なる叫び。


人生も亦、かかる響きをきかないか、

愚かさ、情け、闘いにとらわれ、

思慮なく暮らすわれら人間も、

二つの異なる声をきかないか。


われらも同じ答えをもっている。

だがどこから来るかはわからない。

それは墓の彼方からのこだま、

それと知られる魂の知らせ。


かかるこだまをときどき遠くから、

われらが心の耳は捉える。

聴け、考えよ、愛しめ。

それは神の声なのだから。



桜と小狼が運命の相手であるように――

観鈴と私は久遠なる絆――そは永遠の愛。

――観鈴と私は悠久に共に在る――

参考作品(amazon)
アニメ版「AIR」(DVD初回限定第1〜6巻)

Key「AIR Standard Edition」

CLAMP「ツバサ」(第1巻〜第9巻)

手塚治虫「火の鳥 全巻特別セット」

ゲーテ「ファウスト 第1部」

ゲーテ「ファウスト 第2部」

三島由紀夫「豊饒の海 第一部 春の雪」

三島由紀夫「豊饒の海 第二部 奔馬」

三島由紀夫「豊饒の海 第三部 暁の寺」

三島由紀夫「豊饒の海 第四部 天人五衰」

ジョルジュ・バタイユ「内的体験」

ワーズワース「ワーズワース詩集」

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