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書評「半分の月がのぼる空」 −かるみ−

橋本紡「半分の月がのぼる空」(amazon)

「半分の月がのぼる空」を四巻まで読了。う〜〜〜〜〜ん、軽いなあ…。

五巻もでているみたいですが、近所の本屋に四巻迄しかなかったので、現在の
ところ五巻は未読、四巻までの感想を述べると…う〜〜〜〜〜ん、軽いなあとしか…。

物語が軽いことは一概に悪いことではなく、寧ろライトノベルの強みとも云うべきもの、
すなわち「手軽な読みやすさ」に直結しておりますが、ただ、これ、難病物だから…、
かるみが、なんというか、人物の悲劇的運命までも軽いものにしているように感じるな…。

この物語、四巻までを通してみるなら、全ての状況が客観的には好転しているんですよ。
ヒロインの女の子が重い心臓病ですが、難しいとされていた心臓手術に成功、これからも、
一般的な健康人よりはリスキーな身体状態とは云え、近日中に逃れられぬ死が待つのみと
いったような状態からは脱している。だけど、ヒロインの身体が、例え手術に成功しても、
リスキーな身体であることには代わりがないとか、そういうことで悲劇的心理を作劇している。

その悲劇的心理が、どうも作り物めいてみえて、私にはそれほど感銘を与えなかったな…。
悲劇が外形的には未然の状態で、なおかつ悲劇を描くには人物の内面を描くしかないんだけど、
本作は基本的に人物の内面が無いんですね。人物の内面が存在しないのは日本のライトノベル
に典型的な特徴で、人物が感情動作のスタンダートな典型例として全員が全員造形されて
いるので、感情がメカニカルかつストレートに流れて行くから、そこに悲しみという一なる
ストレートな感情は読み取れても、悲劇的な内面の深みというものは決して読み取れない。

本作は人間を描くことで物語として勝負しようとしているライトノベルには珍しい
タイプの作品で、その意欲は大いに買いますが、ただ、キャラクター造形がことごとく
一般的なライトノベルの人物造形、すなわち深みのない典型的な標準人間像として
造形されているようなところがあって、感情の流れが一辺倒でストレートなんですね。
もう少し、人物の深みを描くようにするともっと良くなると思うんだがなあ…。

ただ、それこそ「動物化するポストモダン」が指摘したようなデータベース的処理に
よって作られるメカニカルなライトノベル作品がライトノベルの大半を占めるなか、
本作は動物に対する刺激反応としてのメカニカルなデータベース的作品ではなく、
きちんと人間を描こうと努力しているところがあって、そういった意欲は評価します。
少なくとも、動物的な凡百のライトノベルよりは、遥かに楽しめたのは事実ですね。

参考図書(amazon)
橋本紡「半分の月がのぼる空」

東浩紀「動物化するポストモダン」

 

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